花に染む
これは少女マンガなのか。
花乃は、一貫して陽大を親友として見ると決めている。
陽大が恋心を向けていたのは雛だと思い込んでいるから。
時折、自分が女として陽大のことを考えていると気付くと幻滅して否定する。
陽大は、一貫して花乃が好きだった。
幼少期の好きの表現と青年期のそれは違うからか、少し惑わされるけど、兄の陽向にとっては当たり前の真実だった描写がある。
雛は、幼少期から陽大が好きだと。
次男である陽大が自分の親の神社を一緒に継げれば、望みはすべて丸くおさまる。
なのに長男の陽向が自分を求めたものだから、一番かけ離れた形になろうとしていた。
だから陽向の立場が疎ましかった。
人懐こい幼少期の陽大の性格と、従姉弟としての親しさ、陽大が律儀に兄の婚約者を尊重する姿勢から、おそらく勘違いをする。
好き合っていたのにという思い込みが覆ったのは、青年期のいつからだったのだろう。
火事をきっかけに陽大との歯車が狂ったのではないと気付いたのは。
陽向は、雛にどのくらい本気で惚れていたかわからないけど、雛を自分が大切にする心算は幼少期から強かったのだと思う。
陽大にとっては一番の理解者で、陽大と花乃の関係を支える姿の優しかったこと。
陽大は故郷との決別により、花乃への想いを断つ。
雛がもたらした兄の結末を思えば雛への憤りは湧き上がるばかりだが、その雛の弟として生きる道を選び、つかぬ折り合いをつける。
雛の言動はすべてが憎ましさを生む。
花乃とは離れても離れても離れられない。
表情は少ないが、行動が。
花乃に頭を埋め手足を絡めるすべての描写が。
ラスト、あのシーンから、陽大が心のままに花乃に踏み込めることを願ってしまう。
抱き合うふたりのシーンを何度も読み返してしまう。
人として惚れ合うふたり?
愛おしくてたまらなかった陽大。
なりふりかまわず駆け寄り、泣きじゃくり抱きつく花乃に応える陽大。